彼女がいる12歳上の男性との3年間。私があえて恋人にならなかった理由

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異性のパートナーというと「恋人」や「夫」が一般的で、それ以外の体の関係だけがある相手は「セックスフレンド」と呼ぶのが一般的です。
でも、世の中に存在する男女の関係はそんな風にきっちり分類できるものばかりかというと、そうでもないのが現実
友達以上恋人未満という言葉もありますが、時には恋人以上に親密な関係だって存在します。
実際に私が、恋人のいる男性と続けた約3年のゆるくも温かい時間を、少しだけここでお見せします。

最初はただのセックスフレンドだった

飲食店の仕事で終電がなくなって、店から遠くない彼のマンションに泊めてもらったのが、2人の関係の始まりでした。
店のOBのKさんという12歳上の独身男性で、勤務時期はほとんどかぶっていなかったものの、時々、職場の飲み会や店にも顔を出している人だったので、気さくでお調子者。
でも実際はビジネスに対して優れた目を持っていて、仕事でも地位を得ながら自分の夢も真剣に追いかけている人、というくらいは彼について知っていました。
多くの人から慕われていて、面倒見も良かったようです。
ただKさんに対しては特に見た目がタイプとかフェロモンを感じるということもなく、年もひと回り離れていたので、一度泊めてもらうまでは本当にただの職場のOBという感じでした。
泊めてもらった夜も元々そんなつもりはなく、兄弟のような男友達の多い私にとっては「何事も起きない」ことの方が普通。
ただ、Kさんとは話も合う部分があって面白く、彼自身に興味がわいて、酔った勢いもあって体の関係になりました。
その後、終電を逃すたびにKさんに連絡しては泊めてもらう関係になり、恐らく月1〜2回くらいのペースで会っていたと思います。
飲んで、おしゃべりして笑い転げて、セックスして眠る、ただそれだけ。
ただのセフレの1人でしたが、彼のマンションは私にとっては家でも職場でもないサード・プレイスという感じで結構寛げる空間だったのです。
何度か会ううちにKさんに遠距離恋愛中の恋人がいること、2人はお互いに仕事の都合で身動きが取れないこと、1〜2カ月に一度は行き来していることなどを聞きました。
私はKさんに対して恋愛感情が全くなかったので、恋人の存在を聞いても「ふぅん」という感じで、彼女さんにバレたら悪いからバレないように気をつけよう、くらいのことしか思いませんでした。

何でも話せる関係に

私と彼は会うたびに、実に色々なことを話しました。
仕事のやり方や新人の教育方法、仕事で人を惹きつける術、彼のやっている事業のこと、好きな本や漫画のこと、若い頃の失敗や子供の頃の思い出。
彼が仕事のアイディアに煮詰まって一緒に明け方まで頭をひねって考えたこともありますし、同じベッドで煙草をふかしながら少年漫画を読んだり、なんというか、セックスはしてもいかにも「男女」という色っぽい関係ではなかったのは確かです。
だからこそか、気づけばなんでも腹を割って話せる間柄になっていました。
私はその時シングル。
Kさんはどうやら他にも時々家に女の子を泊めていたようで、洗面所の棚に女物の歯ブラシやヘアピンが置かれていたりしましたが、私はそれを見ても何の感情も起こらず、何人いるんだ、と純粋に思いはしても言う気は無し。
女物の歯ブラシの横で自分の歯を磨いていた私に気づいたKさんは、「彼女が来る時は全部まとめて捨てるよ」と言っていたずらっ子のようにニヤリと笑いました(実際にその棚は定期的に空っぽにされていたので、恋人が最近来たんだなというのも分かりました)。
「捨てなきゃ鬼畜でしょ」と私が笑うと、「だからお前は歯ブラシ持って帰りな」とKさん。
「他の子にもそう言ってあげなよ」と私が半ば呆れながら言うと、「歯ブラシ置いて俺の女アピールをしてくる子には言わない」と彼なりの理論を展開してきたので、よく分からないながら彼は私のアッサリした性格を気に入っているということだけは理解できました。
恋愛ではないなりに、お互いを人として気に入っている部分が増えていっている感じはありました。

恋愛感情のいらない、特別な関係

それでも私に好きな人ができると、Kさんのマンションからは自然と足が遠のきました。
やがて彼氏ができて、でも上手くいかずにすぐ別れた時、泣きながら電話をした先はKさんでした。
私にとって自分のどんな感情も偽らずに話せる相手は彼で、彼もそれを理解しているようでした。
泣きじゃくって電話口でちゃんと話せない私にKさんは「おいで」と言ってくれて、その晩はたくさん話を聞いてもらい、何もせずに抱きしめられて眠りました。
翌朝は泣き腫らした私の顔を見てKさんは爆笑しながら氷で冷やしてくれ、私はふてくされながら「ありがとう」と言いました。
この他にも、私とKさんはまるで恋人のように、そして時に家族のように、互いに支えあった瞬間がたくさんありました。
なぜ2人の間に恋愛感情が芽生えなかったのかは分かりませんが、私たちは縛ることも縛られることも、常に一緒にいる関係も望んでいなかったのだと思います。
それでも、お互いを大切に感じていた時間があり、それに助けられたことも事実です。
この日々があったから、気の合う男女が必ずしも恋人の形に収まらなくてもいいと思うのかもしれません。

おわりに

私はKさんとのことを、恋愛感情による結び付きを必要としない特別な関係として、彼と交わした言葉や2人の間にあった出来事を今も懐かしく思い出します。
そんなお話は、またどこかで。